子どもが転んで怪我をしてしまった…手元にあるロコイド軟膏を塗って大丈夫?
そんな心配を抱えたことはありませんか?
特に小さなお子さんがいるご家庭では、急な怪我への対処法に迷うことも多いでしょう。
ロコイド軟膏は皮膚科でよく処方されるステロイド外用薬で、湿疹や皮膚炎には高い効果を発揮します。
しかし、傷口への使用は医学的に推奨されておらず、かえって治癒を遅らせたり感染症を悪化させるリスクがあります。
この記事では、なぜロコイド軟膏を傷口に使ってはいけないのか、その具体的な理由を医師の視点から分かりやすく解説します。
また、傷口に適した正しい治療法についてもご紹介しますので、いざという時の参考にしてください。
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QB CLINIC 院長
鍵野 攻允(カギノ コウジ)
若くして脂肪吸引・豊胸専門美容クリニックの院長に抜擢され、現在も日々多くの手術をこなす現役ドクター。 慶應義塾大学病院をはじめ、複数の院での勤務経験を活かし、患者様のお悩みによって、オーダーメイドに治療を提供しております。
経歴・詳細
- 2021年3月日本医科大学医学部 卒業
- 2021年4月慶應義塾大学病院 入職
- 2023年5月QUIC BEAUTY CLINIC 院長
- 2024年12月一般社団法人医鍵会QUIC BEAUTY CLINIC院長
- アムルーズ美容外科
- 東京ブランシェクリニック
- BBクリニック銀座
- 藤ナチュレ美容クリニック
- 日本美容外科学会(JSAPS) 正会員
- 日本坑加齢医学会(JAAM) 正会員
- vaser認定医
ロコイド軟膏は傷口に塗っても大丈夫?【結論:使用禁止】
これは医学的に明確な使用禁止事項です。
多くの方が
炎症を抑える薬だから、傷にも効くのでは?
と考えがちですが、これは大きな間違いです。
ロコイド軟膏に含まれるステロイド成分は、確かに炎症やかゆみを抑える優れた作用を持っています。
しかし、傷口という特殊な状況下では、この作用がかえって逆効果となってしまうのです。



実際、ロコイド軟膏の添付文書(薬の正式な説明書)には、「潰瘍や重度の熱傷には使用しないこと」と明記されています。
これは浅い傷口についても同様の考え方が適用されるためです。
では、なぜ傷口にロコイド軟膏を使ってはいけないのでしょうか。
主な理由は以下の3つです。
| リスク | 説明 |
|---|---|
| 傷の治癒が遅れる | 皮膚の自然な修復機能が阻害される |
| 感染症が悪化する | 細菌やウイルスに対する免疫力が低下する |
| 副作用リスクが高まる | 薬剤の浸透が強くなり、予期せぬ症状が現れる可能性 |
次の章では、これらの理由について詳しく解説していきます。
ロコイド軟膏が傷口に使用できない3つの理由
傷口にロコイド軟膏を塗ってはいけない理由を、3つのポイントに分けて詳しくご説明します。
どの理由も、ステロイド成分の特性と傷の治癒メカニズムとの相互作用に関連しています。
ロコイド軟膏が傷口に使用できない理由① 傷の治癒を遅らせる可能性がある
傷が治る過程では、体が持つ自然な修復機能が重要な役割を果たします。
この修復機能には、適度な炎症反応や細胞の活発な増殖が欠かせません。



ところが、ロコイド軟膏の主成分であるステロイドには、炎症を鎮める作用と同時に、細胞の増殖を抑制する働きがあります。
通常の皮膚炎では、この抑制作用が過剰な炎症を和らげるために有効に働きます。
具体的には以下のようなメカニズムで治癒が遅れます。
- 新しい皮膚細胞の生成が抑制される
- 血管の新生が阻害される
- コラーゲンの合成が減少する
- 創傷収縮が遅れる
実際に、医療現場でもステロイド外用薬を長期使用した患者さんで、小さな傷が治りにくくなるケースが報告されています。
早く治したいという思いでロコイド軟膏を塗ったとしても、実際には回復を遅らせる結果になってしまう可能性が高いのです。
ロコイド軟膏が傷口に使用できない理由② 感染症を悪化させるリスクがある
傷口はどんなに清潔に保とうとしても、空気中や皮膚表面の細菌が付着しやすい状態にあります。
通常、私たちの免疫システムは、こうした細菌の侵入を素早く感知し、炎症反応を起こして排除しようとします。



しかし、ステロイド成分はこの大切な免疫反応を抑制してしまいます。その結果、以下のようなリスクが高まります。
- 細菌やカビが繁殖しやすくなる
- 感染の初期症状(赤み、腫れ、痛み)が隠される
- 気づかないうちに感染が深部まで広がる
- 化膿や膿の形成が進行する
実際には感染が進行している可能性があるにも関わらず、症状が隠されているだけなのです。



皮膚科でよく見られる例として、とびひ(伝染性膿痂疹)や水いぼにステロイド軟膏を誤って使用すると、症状が急激に悪化することが知られています。
これは、ステロイドが病原体に対する体の防御機能を弱めてしまうためです。
ロコイド軟膏が傷口に使用できない理由③ 副作用が起こりやすくなる



ロコイド軟膏は比較的副作用の少ないステロイド外用薬として知られていますが、傷口に使用すると副作用のリスクが格段に高まります。
傷口は皮膚のバリア機能が失われている状態です。
通常の健康な皮膚では、角質層がバリアの役割を果たし、薬剤の過度な浸透を防いでいます。
しかし傷口では、このバリアが破綻しているため、ステロイド成分が深部まで浸透しやすくなります。
その結果、以下のような副作用が現れるリスクが高まります。
| 副作用の種類 | 具体的な症状 |
|---|---|
| 皮膚萎縮 | 皮膚が薄くなり、張りがなくなる |
| 血管拡張 | 毛細血管が浮き出て見える |
| 色素異常 | 皮膚が部分的に白くなったり、色が変わる |
| 多毛症 | 塗った部分の毛が濃く太くなる |
| 接触皮膚炎 | 薬剤に対するアレルギー反応 |
傷口に直接ロコイド軟膏を塗って絆創膏で覆うという行為は、まさにこの危険な状況を作り出してしまうのです。
ロコイド軟膏とは?有効成分とステロイドの強さを解説
ここで、ロコイド軟膏がどのような薬なのかを改めて確認しておきましょう。
正しく理解することで、適切な使い方ができるようになります。
ロコイド軟膏の有効成分ヒドロコルチゾン酪酸エステルの働き



ロコイド軟膏の有効成分は「ヒドロコルチゾン酪酸エステル」という合成ステロイドです。
この成分は、私たちの副腎から分泌される天然のホルモン(コルチゾール)を模倣して作られた人工的な化合物です。
ヒドロコルチゾン酪酸エステルの主な作用メカニズムは以下の通りです。
| 作用の種類 | 具体的なメカニズム |
|---|---|
| 抗炎症作用 | ・炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)の産生を抑制 ・血管の透過性を下げ、腫れや赤みを軽減 ・炎症細胞の患部への集積を阻害 |
| 免疫抑制作用 | ・過剰な免疫反応を抑える ・アレルギー反応を和らげる ・自己免疫による組織破壊を防ぐ |
| 血管収縮作用 | ・皮膚の血管を収縮させる ・局所の血流を減少させて炎症を抑える |
これらの作用により、湿疹や皮膚炎で見られる「赤み・腫れ・かゆみ・痛み」といった症状が改善されます。
ロコイド軟膏のステロイドの強さランクは「普通(Medium)」
ステロイド外用薬は、その効果の強さによって5段階のランクに分類されています。



ロコイド軟膏は、この分類では「普通(Medium)」ランクに位置づけられています。
| ランク | 強さ | 代表的な薬剤 |
|---|---|---|
| Ⅰ群 | 最強(Strongest) | デルモベート軟膏など |
| Ⅱ群 | 非常に強い(Very Strong) | フルメタ軟膏など |
| Ⅲ群 | 強い(Strong) | リンデロンV軟膏、マイザー軟膏など |
| Ⅳ群 | 普通(Medium) | ロコイド軟膏 |
| Ⅴ群 | 弱い(Weak) | プレドニゾロン軟膏など |
この「普通」ランクという位置づけにより、ロコイド軟膏は以下のような特徴を持っています。
- 顔面や首など皮膚の薄い部位にも使用可能
- 乳幼児にも比較的安全に使える
- 副作用が起こりにくい
- 長期使用時のリスクが低い
実際の処方例として、赤ちゃんの乳児湿疹や、大人の顔面の皮膚炎によく使われています。
より強いステロイドは効果は高いものの副作用リスクも高いため、デリケートな部位や敏感な肌質の方には、ロコイドのような中程度の強さの薬が選ばれるのです。
どんなに弱いステロイドでも、間違った使い方をすれば副作用が現れる可能性があることを覚えておいてください。
ロコイド軟膏が使用できる症状・効果
傷口には使えないロコイド軟膏ですが、本来の適応症状に対しては非常に高い治療効果を発揮します。
どのような症状に有効なのかを具体的に見ていきましょう。
ロコイド軟膏を使用できる症状① 湿疹・皮膚炎への効果
湿疹・皮膚炎は、ロコイド軟膏の最も代表的な適応症状です。
さまざまな原因で起こる皮膚の炎症症状に対して、優れた改善効果が期待できます。



ロコイド軟膏が有効な湿疹・皮膚炎の種類には、以下があります。
| 疾患名 | 症状の特徴 | ロコイド軟膏の効果 |
|---|---|---|
| アトピー性皮膚炎 | 慢性的な赤み、乾燥、かゆみ | 炎症を抑制し、かゆみを軽減 |
| 接触皮膚炎(かぶれ) | 特定物質への接触後の急性炎症 | 過剰な免疫反応を抑制 |
| 脂漏性皮膚炎 | 皮脂分泌の多い部位の炎症 | 赤みと炎症を改善 |
| 汗疹性湿疹 | 汗による皮膚の炎症 | かゆみと炎症反応を抑制 |
特に、植物によるかぶれ(ウルシかぶれなど)や化学物質による接触皮膚炎では、ロコイド軟膏が第一選択として使われることが多いです。
これらの症状では、外来抗原に対する過剰な免疫反応が起こっているため、ステロイドの免疫抑制作用が効果的に働きます。



使用方法としては、症状が現れた部位に1日1〜2回薄く塗布します。
ロコイド軟膏を使用できる症状② かゆみや炎症を抑える作用
ロコイド軟膏は、かゆみ止めとしての効果も非常に高い薬剤です。
特に炎症を伴うかゆみに対しては、市販のかゆみ止めでは得られない強力な効果を発揮します。
ロコイド軟膏がかゆみを抑制するメカニズムは、主に3つの作用によるものです。
| 作用メカニズム | 効果・説明 |
|---|---|
| ヒスタミンの放出抑制 | アレルギー反応によるかゆみを根本から抑制 |
| 神経の興奮抑制 | かゆみを感じる神経の感受性を下げる |
| 炎症メディエーターの阻害 | 炎症性物質の産生を抑えてかゆみを軽減 |



具体的には、以下のような症状に効果的です。
| 症状 | 説明 |
|---|---|
| 虫刺され | 蚊、ブヨ、蜂などによる炎症性の腫れとかゆみ |
| 蕁麻疹様の発疹 | アレルギー反応による限局性の赤みと腫れ |
| 原因不明の皮膚炎 | ストレスや体調不良に伴う皮膚の炎症 |
市販のかゆみ止めクリームと比較すると、ロコイド軟膏はより強力で持続的な効果が期待できます。
ロコイド軟膏を使用できる症状③ アトピー性皮膚炎やかぶれにも有効
アトピー性皮膚炎の治療において、ロコイド軟膏は特に顔面や首などの皮膚が薄い部位、小児のアトピー性皮膚炎に対して安全性と有効性のバランスが取れた選択肢として広く使用されています。
ロコイド軟膏は急性期には赤みと腫れの軽減・激しいかゆみの抑制・滲出液の減少・掻き壊しによる二次感染の予防に効果を発揮します。
慢性期においても皮膚の乾燥改善・バリア機能の回復促進・炎症の慢性化阻止に役立ちます。



小児のアトピー性皮膚炎治療では、保湿剤とロコイド軟膏を組み合わせた「プロアクティブ療法」が推奨されています。
これは症状が改善した後も週2〜3回程度塗布し続けることで、再燃を予防する治療法です。
| かぶれの種類 | 具体例 |
|---|---|
| 金属アレルギー | アクセサリー、時計など |
| 化学物質 | 化粧品、洗剤など |
| 植物 | うるし、イチョウなど |
| 物理的刺激 | 衣類の摩擦など |
通常、2〜3日の使用で目に見える改善が得られ、1週間程度で症状がほぼ消失することが多いです。



ロコイド軟膏は何に効くか詳細を知りたい方はこちらもご覧ください。
ロコイド軟膏の使用禁止部位と注意点
ロコイド軟膏は安全性の高い薬剤ですが、使用を避けるべき部位や状況があります。
正しく理解して、安全に使用しましょう。
ロコイド軟膏の使用禁止部位① 傷口・化膿している部分



これは最も重要な禁忌事項です。
具体的に避けるべき状態は以下の通りです。
| 避けるべき傷の状態 | 具体例 |
|---|---|
| 開放創(皮膚が破れている傷) | ・切り傷、擦り傷 ・やけどによる水ぶくれや皮膚剥離 ・掻き壊しによる傷 ・手術創や外傷 |
| 化膿・感染症状がある部位 | ・黄色い膿が出ている ・患部が熱を持って腫れている ・赤い筋状の腫れ(リンパ管炎の兆候) ・悪臭を伴う分泌物がある |
万が一、誤って傷口にロコイド軟膏を塗ってしまった場合は以下のように対処しましょう。
- すぐに使用を中止する
- 清潔な水で軽く洗い流す(強くこすらない)
- 経過を観察し、悪化する兆候がないかチェック
- 症状が改善しない場合は医療機関を受診
特に注意が必要なのは、一見治ったように見える古い傷跡です。
表面的には治癒していても、深部で炎症が続いている場合があり、そこにロコイド軟膏を塗ると治癒過程が乱れる可能性があります。
ロコイド軟膏の使用禁止部位② 目や口周り・粘膜
目の周りや口周りへの使用には特別な注意が必要です。
ロコイド軟膏は顔面にも使用できる薬剤ですが、粘膜に近い部位では慎重になる必要があります。



眼周囲への使用リスクは以下の通りです。
| リスク | 具体的な症状 | 対処法 |
|---|---|---|
| 眼圧上昇 | 視野の狭窄、頭痛 | 眼科受診 |
| 白内障 | 視界のかすみ、眩しさ | 眼科受診 |
| 緑内障 | 視野欠損、眼痛 | 緊急眼科受診 |
口周りへの使用には以下のようなリスクがあります。
- 誤嚥による消化器症状
- 口腔カンジダ症の誘発
- 口唇の皮膚萎縮
安全に使用するためには、次のポイントを押さえておきましょう。
- まぶたには直接塗布しない
- 口唇への直接塗布は避ける
- 薬を塗った手で目を触らない
- 塗布後はしっかりと手を洗う
もし目に薬剤が入ってしまった場合は、すぐに清潔な水で洗い流し、症状が続く場合は眼科を受診してください。
ロコイド軟膏の使用禁止部位③ 感染症がある部位
ステロイドの免疫抑制作用により、病原体の増殖が促進され、症状が急激に悪化する危険があるためです。
特に注意が必要な感染症と悪化のリスクは以下の通りです。
| 感染症の種類 | 主な疾患 | 悪化のリスク |
|---|---|---|
| 細菌感染症 | とびひ、毛包炎、蜂窩織炎 | 黄色ブドウ球菌の増殖促進、深部感染の拡大 |
| 真菌感染症 | 水虫、カンジダ症 | 白癬菌やカンジダ菌の過増殖 |
| ウイルス感染症 | ヘルペス、帯状疱疹、水痘 | ウイルス増殖促進、重篤化・拡散リスク |
医師ではない一般の方が感染症と湿疹を区別するのは困難ですが、以下の症状がある場合は感染症を疑い、ロコイド軟膏の使用は控えてください。
- 膿や悪臭を伴う分泌物
- 発熱を伴う皮膚症状
- 急速に拡大する発疹
- 水疱が多発している
- 患部に激しい痛みがある
判断に迷った場合は、自己判断で薬剤を使用せず、皮膚科専門医の診察を受けることが最も安全です。
ロコイド軟膏の正しい使い方と用法用量
ロコイド軟膏の効果を最大限に引き出し、副作用を最小限に抑えるためには、正しい使用方法を守ることが重要です。
医師の指示に従いつつ、以下のポイントを参考にしてください。
ロコイド軟膏の1日の使用回数と塗る量の目安
ロコイド軟膏の基本的な使用頻度は1日1〜2回です。
症状の程度や医師の判断により調整されますが、多くの場合は朝晩の1日2回、または夜のみの1日1回で処方されます。
塗布量の目安として、フィンガーチップユニット(FTU)という指標が用いられます。
| 部位 | 必要な軟膏の量 | 目安 |
|---|---|---|
| 顔全体 | 約0.5FTU | 人差し指第一関節の半分 |
| 手のひら2枚分の面積 | 1FTU | 人差し指第一関節まで |
| 腕全体(片側) | 約3FTU | 人差し指第一関節の3倍 |
| 脚全体(片側) | 約6FTU | 人差し指第一関節の6倍 |
年齢による使用量の調整も重要で、乳幼児(0〜2歳)は大人の1/4〜1/3程度、小児(3〜12歳)は大人の1/2〜2/3程度が適量となります。
適量を守ることで、効果と安全性のバランスが最適化されます。



逆に塗りすぎると、副作用のリスクが高まったり、薬剤耐性が生じる可能性があります。
使用期間についても重要で、一般的には1〜2週間の短期使用が基本です。
症状が改善したら、医師の指示に従って徐々に使用頻度を減らしていきます。
ロコイド軟膏の塗り方のコツと注意点
正しい塗布方法をマスターすることで、薬剤の効果を最大化し、副作用を防ぐことができます。
基本的な塗布手順は、まず手を清潔に洗い、患部の汚れや古い薬剤を除去します。
次に適量を指に取り、擦り込まずにやさしく伸ばした後、他の部位への付着を防ぐため手を再度洗います。
薄く均一に伸ばし、直線的ではなく円運動でやさしく塗布し、炎症の境界部分もカバーするよう患部より少し広めに塗ることが大切です。
保湿剤などと併用する場合の塗布順序は以下の通りです。
| 順序 | 使用する製品 |
|---|---|
| 1 | 清拭・洗浄 |
| 2 | 保湿剤(化粧水、乳液タイプ) |
| 3 | ロコイド軟膏(薬効成分を含む薬剤) |
| 4 | 保護剤(ワセリンなどの保護目的の製品) |
絶対に避けるべき使用方法として、医師の指示なしに絆創膏やラップで覆う密封療法・他人との薬剤共用・使用期限切れの薬剤使用・大量塗布による早期治癒への期待などがあります。
これらの基本ルールを守ることで、ロコイド軟膏の治療効果を安全に最大化できます。
ロコイド軟膏の副作用と対処法
ロコイド軟膏は比較的安全なステロイド外用薬ですが、副作用が全くないわけではありません。
早期発見と適切な対処が重要です。
ロコイド軟膏のよくある副作用症状
一般的に報告される軽微な副作用には以下があります。
| 副作用症状 | 出現時期 | 特徴 | 対処法 |
|---|---|---|---|
| 皮膚乾燥 | 使用開始数日後 | 粉を吹いたような状態 | 保湿剤の併用 |
| 軽度の刺激感 | 塗布直後 | ヒリヒリ感、軽い痛み | 様子観察、継続困難なら中止 |
| 毛包炎 | 1〜2週間後 | 毛穴周囲の赤いブツブツ | 使用中止、清潔保持 |
| 一時的な色素変化 | 数週間後 | 塗布部位の色調変化 | 使用中止で徐々に改善 |
これらの軽度な副作用は、使用を中止することで多くの場合自然に改善します。
ただし、症状が続く場合や悪化する場合は、医師に相談することが大切です。



以下の症状が現れた場合は、副作用の可能性が高いため、すぐに使用を中止してください。
- 塗布部位の急激な悪化
- 新たなかゆみや痛みの出現
- 水ぶくれや膿疱の形成
- 広範囲への症状拡大
ロコイド軟膏の長期使用による副作用リスク
ロコイド軟膏を数か月以上の長期間使用したり、広範囲に使用し続けた場合、重篤な副作用が報告されています。
特に皮膚に現れる副作用では、以下のようなものがあります。
| 副作用名 | 症状 | 回復可能性 |
|---|---|---|
| 皮膚萎縮 | 皮膚が薄くなる、張りの低下 | 部分的に回復 |
| 血管拡張 | 毛細血管の透見、紫色の斑点 | 改善困難 |
| 皮膚線条 | 妊娠線様の筋状の跡 | 改善困難 |
| ざ瘡様発疹 | ニキビ様のブツブツ | 中止で改善 |
また、稀ではありますが全身への影響として、大量使用時の副腎機能抑制・小児での成長抑制・広範囲長期使用による骨密度低下・免疫機能抑制による感染症への抵抗力低下などが報告されています。
特に副作用が出やすい高リスク群として、
- 皮膚が薄く薬剤吸収率の高い高齢者
- 体重に対する体表面積が大きい乳幼児
- 薬剤代謝が遅延する腎機能・肝機能低下者
- 感染症リスクの高い糖尿病患者
などは特別な注意が必要です。
ロコイド軟膏による副作用が出た場合の対処法
万が一ロコイド軟膏の使用中に副作用症状が現れた場合は、まず使用を即座に中止し、症状悪化を防ぐことが最優先です。
医師への正確な報告のため、患部の写真を記録しておくことも有効です。
軽度の症状であれば、患部を清潔に保ち、刺激の少ない保湿剤で乾燥を防ぎながら、患部を掻いたり擦ったりしないよう注意して経過観察します。
受診の必要性については症状の程度により判断が分かれます。
| 受診の緊急度 | 症状の特徴 |
|---|---|
| すぐに受診 | 広範囲の皮膚変化、強い痛みや熱感、膿疱や潰瘍の形成、全身症状(発熱、倦怠感) |
| 経過観察可 | 軽度の乾燥や赤み、一時的な刺激感、限局的な色素変化 |



医療機関では副作用の種類に応じて治療が行われます。
皮膚萎縮にはビタミンA誘導体外用やレーザー治療・感染症には抗菌薬・アレルギー反応には抗ヒスタミン薬が用いられ、重篤な全身症状では入院治療が検討されます。
重要なのは、副作用を恐れすぎて必要な治療を避けるのではなく、正しい知識を持って適切に使用することです。
ロコイド軟膏が使えない傷口の治療に適した薬剤の選び方
ロコイド軟膏が使用できない傷口には、どのような治療法が適しているのでしょうか。
傷の状態に応じた適切な対処法をご紹介します。
ロコイド軟膏が使えない傷口の状態別適切な薬剤
日常的によく見られる浅い切り傷や擦り傷に対しては、まず流水で土や異物を十分に洗浄し、清潔なガーゼで5-10分間圧迫止血を行います。
必要に応じてヨウ素系やクロルヘキシジン系の消毒薬を使用した後、絆創膏や傷用パッドで保護します。
市販薬としては用途に応じて以下の薬剤が使用できます。
| 成分名 | 商品例 | 効果 | 使用場面 |
|---|---|---|---|
| 白色ワセリン | プロペト軟膏 | 保湿・保護 | 軽度の擦り傷 |
| クロラムフェニコール | クロマイ軟膏 | 抗菌作用 | 感染予防 |
| フラジオマイシン | ソフラチュール | 抗菌作用 | 化膿予防 |
| ポピドンヨード | イソジン軟膏 | 消毒作用 | 汚染された傷 |
軽度のやけどでは、受傷直後に15-30分間流水で冷却し、水疱をつぶさずに保護します。



アズノール軟膏や白色ワセリンによる保護、処方薬では銀スルファジアジン軟膏による感染予防が有効です。
感染が疑われる傷口には抗生物質を含む薬剤が必要で、市販薬ではテラマイシン軟膏やドルマイシン軟膏などが使用できます。
ただし広範囲感染や全身症状がある場合は処方薬による治療が必要です。
傷口の治療について医師に相談すべきケース
自宅での処置では対応できない傷口の特徴を理解し、適切なタイミングで医療機関を受診することが重要です。
傷口の重篤度に応じて受診の緊急性が異なります。
以下に該当する場合は、緊急受診が必要になります。
- 圧迫止血しても止まらない大量出血
- 脂肪組織や筋肉が見える深い傷
- 犬や猫などによる動物咬傷
- ガラス片や金属片の深い混入
- 指の感覚や動きの異常を伴う神経・腱損傷の疑い



また、以下のようなケースでは、24時間以内に受診をする必要があります。
- 土砂や汚水による激しい汚染
- 手のひら大以上の広範囲熱傷
- 発熱やリンパ節腫脹などの感染症状
- 錆びた金属による受傷で破傷風リスクが高い
1週間経過しても改善しない治癒の遅い傷・縫合が必要な可能性のある傷・顔面の傷など美容上の懸念がある場合は、数日以内の受診を検討しましょう。
受診すべき診療科は傷の種類により異なります。
| 傷の種類 | 推奨診療科 | 理由 |
|---|---|---|
| 一般的な外傷 | 外科・整形外科 | 外傷治療の専門性 |
| 顔面の傷 | 形成外科・美容外科 | 美容的配慮 |
| やけど | 形成外科・皮膚科 | 専門的な熱傷治療 |
| 動物咬傷 | 外科・感染症科 | 感染症対策 |
| 小児の外傷 | 小児科・小児外科 | 年齢に応じた対応 |
受診時は受傷時刻と状況・応急処置の内容・使用した薬剤・アレルギーの有無・破傷風予防接種歴を準備しておきましょう。
迷った場合は、「念のため」という気持ちで専門医に相談することをお勧めします。
まとめ
ロコイド軟膏は傷口に塗ってはいけません。
この薬剤を傷口に使用すると、ステロイド作用により皮膚再生が阻害されて治癒が遅れ、免疫機能の抑制により感染症が悪化し、薬剤の過度な浸透により副作用リスクが高まる危険があります。



ロコイド軟膏は本来、湿疹・皮膚炎、かゆみを伴う皮膚症状、アレルギー性の皮膚反応に対して優れた効果を発揮する安全な薬剤です。
使用時は1日1〜2回、適量を薄く塗布し、医師の指示に従って短期間使用することが大切です。
傷口にはその状態に応じた適切な治療が必要です。
浅い傷は清拭・消毒後に絆創膏で保護し、軽度のやけどは十分冷却後にやけど専用軟膏を使用します。



化膿した傷には抗生物質配合の外用薬、重篤な傷は速やかな医療機関受診が必要です。
「傷には傷用の治療を、皮膚炎には皮膚炎用の治療を」という原則を守り、判断に迷った際は皮膚科専門医や薬剤師に相談しましょう。


QB CLINIC
編集部
経歴・詳細
総合病院で看護師として働いた後、美容医療の世界へ。現在はオンライン診療専門のQuic Beauty Clinicで患者さんと向き合いながら、正しい美容医療の情報をお伝えしています。



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